【特別レポート】世界的な抹茶ブームが日本茶を破壊する? 「本物の一杯」と職人を守るために私たちが知るべき真実

【特別レポート】世界的な抹茶ブームが日本茶を破壊する? 「本物の一杯」と職人を守るために私たちが知るべき真実

急須からゆっくりと立ち上る湯気、茶葉が優雅に開くのを待つ静寂の時間。私たちお茶を愛好する者にとって、一杯のお茶を淹れる「時間と空間」は究極のラグジュアリーです。しかし現在、私たちが愛してやまない「日本茶」の生産現場に、非常に皮肉で逆説的な危機が訪れているのをご存知でしょうか。

先日、東京で開催されたエグゼクティブサミット「Tech for Impact Summit 2026」にて、日本茶のマーケットプレイス『Yunomi Life』がホストを務めたセッション「世界的な抹茶ブームが日本茶産業を破壊する」。そこで語られたのは、SNSが火付け役となった抹茶ブームの裏側に潜む、衝撃的な事実でした。

■ 一世代で94%の茶農家が消滅。巨大市場の「恩恵」はどこへ? 緑茶の輸出額は2024年から2025年にかけて倍増し、政府目標を5年も前倒しで達成しました。これだけを聞けば喜ばしいニュースに思えますが、実は推定40億ドル(約6,000億円)とされる世界の抹茶市場に対し、日本の緑茶輸出額はそのわずか1割程度。莫大な利益の大部分は、日本以外の国や企業に流れているのです。

事実、日本の茶農家は1985年の約20万戸から、直近では約1万2,000戸へと激減。一世代で実に約94%の農家が失われました。海外資本の巨大茶園に対抗するため、国内では少数の大規模農家への集約が急激に進んでいます。

■ 設備投資1億円の壁と「偽装抹茶」の蔓延 なぜ、ブームに乗って茶農家や工場は潤わないのでしょうか?その最大の理由が「設備の壁」です。 私たちが愛する「本物の抹茶」は、日光を遮って育てた茶葉を揉まずに乾燥させた「碾茶(てんちゃ)」から作られます。しかし、日本の多くの工場は「煎茶(揉む工程がある)」用であり、碾茶へのライン転換には小規模施設でも約1億円もの莫大な費用がかかります。

長期的な葉茶市場の低迷で負債を抱える企業にとって、このブームはあまりに急激すぎました。結果として、帳簿上は黒字でも資金繰りに窮し、倒産・廃業を選ぶ業者が数十年来の高水準に達しているという痛ましい逆説が起きています。さらに憂慮すべきは、高価な碾茶の代わりに、安価な粉末茶が「抹茶」と偽って海外へ輸出・流通し始めているという指摘です。

■ 「ゆっくりとお茶を淹れる」文化の再興へ 世界中で抹茶ラテがファストフードのように消費される一方で、日本国内では「急須でお茶を淹れる」という所作そのものが失われつつあります。

この状況に対し『Yunomi Life』は、国内の消費者を再び自国の茶文化と出会わせる新たなプロジェクト(東京での実店舗カフェ構想など)をスタートさせています。効率やスピードが求められる時代だからこそ、産地のテロワール(風土)を感じ、農家の顔を思い浮かべながら、ゆっくりとお茶を淹れる時間――。私たちが日々大切にしているその「ラグジュアリーな所作」こそが、日本の茶文化と職人たちを守る最大の力になるのかもしれません。

次に極上の抹茶や日本茶を味わう時は、その一杯に込められた作り手たちの歴史と情熱に、ぜひ想いを馳せてみてください。


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